マレーシアのマハティール・モハマド元大統領が保守系言論誌『月刊日本』7月号のインタビューに登場した。8ページにわたり、わが国の対中外交やアジアインフラ投資銀行(AIIB)不参加などを嘆くとともに「日本は、今こそ米国から自由になるべき」と喝破している。

 同インタビューは1日、首都クアラルンプールで行われた。外務省に出向し、アジア各国に駐在経験のある元日本郵便副会長、稲村公望中央大学客員教授がインタビュアーを務めている。

 マレーシアが米国と交渉を続ける環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について「TPPの29章の原案は、参加国が対等の立場で用意されたものではなく、米国が自国が有利になるように秘密裏に事前に作成したものであり、とうてい受け入れがたい」とあらためて反対の立場を表明。

 投資家・国家間訴訟(ISD)条項を特に問題視し、同国の民族間格差是正措置「ブミプトラ政策」を例に「こうした政策はTPPの規約に反することになる」と述べ、TPPが支配のための協定であることを指摘している。

 わが国の経済政策については「日本経済は弱体化させられた」と両断。米国の経済制度が輸入されて終身雇用制が崩壊したことを挙げ、「富める者が貧しくなり、貧しい者がもっと貧しくなった」との見方をした。

 「日本の次世代リーダー養成塾」の講師を毎年務め、「立ち上がれ日本人」(新潮新書)の著書もある元首相は、日本の若い世代について「彼らは米国文化の強い影響を受け、混乱しているようだ。私は、自国の伝統を大事にすべきだと思う」と励ます。

 わが国の外交については「日本は米国に従属していて主体的な政策がない」と述べ、「『中国が敵だ』とする政策が復活したようにも見える」と分析。南沙諸島の領有権などをめぐる問題では、「米国はマレーシアやASEAN諸国を中国と対決させようとしますが、それは問題を解決することにならない」と述べ、全ての関係諸国があらゆる努力を結集して戦争を絶対に避けるべきだと訴えている。

 わが国が参加を見送ったAIIBについては、「米国の支配がないということなので、それは歓迎すべきことかもしれない。中国がAIIBをコントロール、支配しようと思っても、他に金融面で強い国が参加しているので、中国が支配できると思わない」と分析。その上で、「日本はこの銀行に参加して、この銀行を運営する影響力を行使する役割を求めた方がよかったのではないか」との見解を示した。

 1997年のアジア通貨危機の際、思い切った通貨取引規制を断行してIMFとジョージ・ソロスを撃退した元首相は、貿易決済に金貨ディナールの導入を提唱していた。「米ドルには価値がないのに、貿易決済に米ドルが使われているために、米ドルに需要がある。もっと安定的に価値がある金を基礎とした通貨を貿易決済使えば、貿易はもっと公平になる」と述べ、国際通貨システムの変換の必要性を訴える。

 サブプライムローン問題にも触れ、「米国型の経済システムは破綻している。米国に追従しているだけでは駄目だ。一国だけ主張しても小さな声にしからならない。私たちは国際社会において、まとまって発信することが大切。日本は今こそ米国から自由になるべき。なぜ日本は東アジアの声を世界に発信していかないのか」と問い掛けている。
月刊日本 2015年 07 月号 [雑誌]